モリスの言葉・『小芸術(装飾芸術)』から…つづき

人々は法王や王様や皇帝がこれこれの建物を建てたとよく言うが、…果たしてそうなのか。そうではなく、みなさんやわたしのような人間、後世に仕事を残すだけで名は残さない職人たちが建てたのではないか。
(装飾は)人々が使わなければならないものを、使うのが楽しくなるものにする。また、必要に迫られて作らなければならないものを作るのが楽しくなるようにする。… この芸術が存在しなければ、われわれの休息は空ろでつまらなく、われわれの労働は、ただの忍耐、ただ心身をすりへらす活動になってしまう。
世間の人々はものを安く買おうとしすぎる。…あまりにも無知で、作った人間にふさわしい対価をあたえているかどうかを知らないし、知ろうともしない。そして製造業者は、… 安売り競争だけを考えていて、彼らが求めるような安値で、胸糞の悪い製品を陽気に売りつけるのだ。     
(金持ちの)少数者のあいだで芸術が貧相で薄っぺらに生きていくくらいなら、むしろすべての芸術がしばらくのあいだ世界から一掃されるほうがいい。… 小麦は守銭奴の穀倉で朽ち果てるよりも、大地に還った方がいい。そうすれば、暗闇の土中で再び成長するチャンスに恵まれるかもしれないのだから。
いつの時代でも、もし数人の者が自然と調和するなんらかのことを実現しようと真剣に心を決めてかかれば、それはいつかは実現する…。数人の心に同時にある考えが浮かぶのは、偶然ではない。そうではなく、その人たちは世界の心臓部で渦巻くなにかに押され、声を出し行動せずにはいられなくなっているのだ。

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