わたしが選んだモリス名言集

19世紀に生きたモリスなのに、21世紀のわたしたちの
胸にも突き刺さることばがあります

 ■『小芸術(装飾芸術)』 1877年3月2日より
いったい、そんなに金を儲ける必要があるのだろうか。ロンドンのわずかな泥土で得られる金のために…気持ちのよい木々を切り落とし、太陽を曇らせ、煙やもっと有害なもので大気を汚染し、それでも、誰もそれに心を配り改めるのは自分の責任だとは考えていない。これこそ、現代の商業、現場を忘れた金の亡者がわれわれにもたらした一切のことなのだ。
この(ロンドンの)おぞましい通りを日々行き来している(食べるにもこと欠く)労働者たちに、美に関心を持ってほしいなどとどうして頼むことができるだろう。       
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 ■『意義ある労働と無意味な労苦』 1884年1月より
労働には二種類ある。生活を楽しく晴れやかにする労働と、たんなる生活の重荷である労働だ。…一方には希望が含まれており、他方にはそれがない。前者をおこなうのは人間らしく、後者の労働は拒否するのが人間らしい。                   
文明がわれわれに欲望というものを産み出した。そしてその欲望を文明は満足させてくれない。
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 ■『古建築保存協会第12回総会講演』 1889年より
いったいロマンスとは何なのか。ロマンティックということばはよくまちがって使われるが、ロマンスとは、歴史を真に把握する能力、現在のなかに過去を見い出す力だ。
(古い建物が持つ)美とロマンスを無視するのは、けっして進歩でも実用的でもなく、堕落だ。人間生活を幸せにするこの手助けを、つかのまの思いつきや強欲のために破壊するのは進歩ではなく、退廃だ。
現代世界においては、絶対的に確実な成果などほとんどない。なんらかの犠牲を伴っている。明確な知的成果を得るために必要なら、われわれは少しの時間や不便さを我慢することを呼びかけるだろう。だがその場合、成果はほんものでなければならない。
昔の職人の仕事は、工夫に富み独創的で繊細だった。現代の労働者は、生まれた時代の社会環境のゆえに――自分の落ち度ゆえではない――それらの質すべてを欠いている。
現在では、労働者は生計だけを意識して、見たこともなくたんなる抽象でしかない世界市場のためにひたすら働き、みずからの手を通過する作業そのものにはなんの思いも馳せない。
現在のシステムが機械に変えてしまった働き手を、必要不可欠の伝統に導かれた自由な芸術家にすることはできない。人々は労働者を機械にしてしまい、それで一定の便宜を得た。それで満足すればいい。機械に人間としての労働を期待してはいけない。
われわれがすさまじい勢いで変わってしまったのは明らかであり、そういうかたちで歴史を受け継ぐ担い手として自らを確立してしまった。
そうこうするあいだも、これから長ければ100年間、わが国では急激な変化が起き、現在の状況もほとんど認識できないようになる。

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