『意義ある労働と無意味な労苦』の要旨をまとめると……
 富裕層は「勤勉」をほめたたえる。だが労働を強いられている労働者は、これをよく検討すべきだ。現在の労働には、意義ある楽しい労働と、生活の重荷でしかない労働の二種類がある。楽しい労働をおこなうのは人間らしく、災いでしかないような労働は拒否するのが人間らしい。では、価値ある労働の要素は何か。それは三つある。労働に休息の希望、生産の希望があり、労働そのものが楽しいことだ。これ以外の労働は奴隷労働だ。

 現代文明社会では労働がまったく不平等に配分されている。他の階級の希望のない労働によって一階級が特権的に維持されている。人々が惨めな暮らしを強いられているのは、多くの人間が生産せず、また多くの労働が無駄なものの生産に浪費されているからだ。この階級的強奪を廃止しよう。全員が働き、労働の無駄と無駄な消費がなくなれば、人々は豊かになり、休息と生産の希望という二つの要素は実現される。

 社会主義者のなかにはこの二つが実現されれば十分だという人もいるが、わたしは三番目の要素(労働の楽しさ)の実現を主張したい。たとえ労働時間が短くなっても、その労働がわずらわしいままであれば意味がない。未来の共同体では、もっとも平凡な労働も含め、すべての労働を魅力的なものにしなければならない。つまり、十分な休息、快適な環境を保証し、有益で多様で、知的興味を持って遂行できる労働になるということだ。どう改善してもわずらわしい労働は、しなくてすませるよう検討すべきだ。

 これを闘って実現しようではないか。われわれが生きているあいだには実現できなくても、平和な未来のイメージは人生を照らし導いてくれる。そしてそれに向け闘うことによって、少なくとも人間らしい生活を送ることができるではないか。                    ウィリアム・モリス 1884年1月


 目次 (翻訳者がつけました)
   〇すべての労働に意義があるわけではない
        ――「勤勉に働け」にごまかされるな
   〇楽しい労働には三つの希望が含まれる
   〇現在の労働に、その三つの希望があるか?
   〇労働者階級に重くのしかかる労働=無駄の生産   ―――― その1ページ

   〇みずからの資源を無駄にする文明
   〇生産せずに消費する特権階級の廃止を
   〇豊かになった労働力をどう使うか、熟考しよう
   〇現体制では魅力的な労働は獲得できない
   〇すべての労働がいそいそと陽気におこなえる社会  ―――― その2ページ

   〇変化に富んだ労働であること
   〇気持ちの良い環境で働けること
   〇実用主義的な過渡期も、平等と自然の美があれば
   〇未来社会では、危険で嫌な仕事はどうするか
   〇心に抱いた未来の平和が
     混迷と悩みに満ちた人生を照らしてくれる       ―――― その3ページ

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