『小芸術(装飾芸術)』の要旨をまとめると…… |
芸術は、人間が美を見い出した喜びを表現するための偉大な体系だ。だが、装飾芸術(小芸術)が、絵画や彫刻・建築などの大芸術と切り離されてしまったため、大芸術・小芸術ともに病んでしまった。 装飾芸術は、人間が使う物や道具を、使うのが楽しくなるようにし、またそれを作るのが楽しくなるようにする大事な分野だ。かっては、装飾が労働の喜びの表現であり、工芸職人が想像力と創造力にあふれた芸術家だった時代があった。だが、商業主義、金儲けにあくせくする現代では、まがい物の商品が大量にあふれ、労働はただの呪われた労苦になってしまった。 装飾芸術は死にかけており、芸術全体も同じ運命だ。いったい、大気を汚染し川を汚して、そんなに金を儲ける必要があるのか。 こんな事態はすべての階級の責任だが、これを変えられるかどうかは労働者である工芸職人にかかっている。イングランドに生まれた、自然にふさわしいシンプルな農民芸術の歴史に学び、労働を楽しいものとして取り戻し、平等を実現しようと決意するかどうかにかかっている。 諸君、どうか、この夢、この希望の実現に力を貸してほしい。 ウィリアム・モリス 1877年3月 |
目次 (翻訳者がつけました) |
〇切り離された小芸術と大芸術 〇装飾芸術の二つの役割 〇労働を楽しく彩るはずの装飾芸術 〇小芸術をとおして見える歴史 〇分業で引き裂かれた小芸術 ―――― その1ページ 〇空白のあとに何が? 〇無意識の英知――古代芸術に学べ 〇先導するのは実践者――工芸職人だ 〇自然と歴史に学べ ―――― その2ページ 〇美は宮殿ではなく農家にある 〇金儲け主義でなされる「復原」工事 〇考えを濃縮させ、あらゆる方法で学べ 〇芸術には科学と異なる法則が支配する 〇まがいものの仕事があふれる世界で ―――― その3ページ 〇解決するのは工芸職人だ 〇そんなに金を儲ける必要があるのか 〇利己主義と贅沢のもとでは芸術は病気になる 〇金持ちだけの芸術なら、いったん一掃されるほうがいい 〇惨めさから解放された芸術は、わが街を林のように美しくする 〇この夢、この希望の実現に力を ―――― その4ページ |